大腸内視鏡.jP
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カルチノイドと癌

2018/05/01

こんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
今回のブログは「カルチノイドと癌」についてです。
癌(がん)は聞いたことがあるかと思いますが、「カルチノイド」は耳にしたことがない方のほうが多いのではないでしょうか……。
いつもより少し難しいお話になりますが、「カルチノイドと癌」の違いをできるだけ簡単にご紹介したいと思います。

癌はなぜできるのか?

はじめに癌発生のメカニズムはとても複雑で現在の医学で解明できないものもあります。一般的にきっかけとなる要因としては、喫煙・飲酒・ストレス・栄養や睡眠の不足が挙げられます。これらがあると遺伝子が傷ついてしまうのです。人間の体は傷ができたら治りますよね?常に体が元の状態に戻るように頑張っているのです。このことを新陳代謝(ターンオーバー)と呼びます。
この新陳代謝の過程で体は古い細胞を捨て新しい細胞に生まれ変わっていきます。その際に突然変異を起こした細胞が免疫細胞と戦います。この免疫細胞との戦いに勝ってしまうと癌細胞が誕生するのです。たくさんの戦いが体内で行われ、生き残った癌細胞はやがて癌腫となっていくのです。

癌細胞の特徴

1.癌の発生した場所から周囲に広がっていきます。また血管やリンパ節にのって体のあちらこちらに飛んでいきます。これを転移と呼びます。
2.人の都合を考えません!つまり体の中のルールを無視して勝手に増殖を続けます。
3.癌細胞は他の組織が必要としている栄養を奪い取ります。そして自分の成長に使ってしまいます。必要なところに栄養がいかないため、だんだんと体力が落ちていくのです。

上記の1、2のような特徴があるため、癌が発生した場所によって転移する場所も違ってきます。

癌の治療は?

進行具合(癌が発生した部分からどの程度深く到達しているか≒深達度)や転移、患者さんのQOL(クオリティーオブライフ)によって治療法が決まります。深達度はTis~T4bに分類され、数字が大きくなるほど、大腸癌が深く広がっています。
癌の深達度の図説

一般的には外科的な治療、薬物療法、放射線治療があげられます。
また現在では先進医療(癌抑制遺伝子を用いた新しい治療法など、高度な医療技術を用いた治療のことです)と呼ばれる治療法もあります。

カルチノイドってどんな病気?

カルチノイドという言葉を直訳すると「癌に似た」となります。このことから「癌モドキ」なんていう表現もします。
今まで説明してきた癌とどう違うのでしょうか?どこが似ているのでしょうか?そんなことを踏まえてカルチノイドを説明していきましょう。まずは、カルチノイドの歴史からお話ししたいと思います。

歴史

神経内分泌腫瘍(人体に広く分布する神経内分泌細胞からできる腫瘍で、胃や十二指腸、小腸、虫垂、大腸などの消化管膵臓、肺など全身のさまざまな臓器にできる)は長年の間カルチノイドと呼ばれていました。この神経内分泌腫瘍は悪性腫瘍に比べ進行がゆっくりで予後が悪いことは少ないと考えられてきました。しかし近年では「内分泌腫瘍は悪性腫瘍として治療すべき!」という考えが高まり、消化管内分泌腫瘍の病理分類ではカルチノイドという呼び方はされなくなりました。
では、本題のカルチノイドとは一体何なのでしょうか。

カルチノイドとは

神経内分泌細胞と呼ばれる細胞が腫瘍化したものを神経内分泌腫瘍(NET)と呼んでいます。そのうち悪性の度合いが低いものをカルチノイドと呼びます。
神経内分泌細胞は全身の臓器に分布しています。そのため、神経内分泌腫瘍は全身の臓器から発生します。そして発生が最も多いのは消化器なのです。(おおよそ60%以上と言われています。)また気管支や咽頭粘膜にも発生する事が報告されています。
内分泌腫瘍という名前通りこの腫瘍からはホルモンが分泌されます。痛みを引き起こすとされるヒスタミン・筋肉収縮に関係するセロトニン・自律神経に関与するカテコラミンなどです。これらの物質の過剰な分泌により、顔面紅潮・腹痛・下痢・嘔吐・動悸などなどいろいろな症状が起こります。この症状をカルチノイド症候群と言います。カルチノイドと診断された患者さんの20%未満でこの症状が起こるとされています。症状が出ない患者さんの方が多いんですよ。
では、全身の臓器から発生するとご紹介しましたが、実際はどの部位から発生することが多いのでしょうか。ランキングで見ていきましょう。

 

消化器カルチノイドの日本における発生部位ランキング

★第1位    直腸カルチノイド
★第2位     胃カルチノイド
★第3位  十二指腸カルチノイド

(※罹患率は10万人に1~2人と極まれな病気です。)

★1位 直腸カルチノイド
直腸カルチノイドの写真

大腸のカルチノイドの大半を占めます。全大腸癌の1%未満でほとんど症状がありませんが、大きい腫瘍になると潰瘍ができたり、血便がでたりする病気です。検診などの大腸内視鏡検査で発見されることが多い病変です。

大腸内視鏡では、大腸ポリープのような隆起が見られます。ポリープと違う点は、表面がつるつるしていて、黄色っぽく、硬い(結節)という点があげられます。大きいものは転移する可能性があります。

★第2位  胃カルチノイド
様々なタイプがありますが、最も多いカルチノイドは典型的に症状が認められないケースが多いです。胃の内視鏡で発見され、病理組織検査において胃前庭部のG細胞(ガストリンを分泌する細胞)が健康な人より多く見つかります。また、胃カルチノイドは胃体部の慢性萎縮性胃炎が背景で起こるとも言われています。

胃を中心とした臓器の図説

?第3位の前に豆知識!

※ガストリンとは?
胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌されるホルモンのことです。食べ物が入ってくると胃底部に働きかけ胃酸の分泌を促します。

★第3位 十二指腸カルチノイド
偶然発見されることが多いです(消化管内分泌腫瘍の2~3%程度)。膨大部と呼ばれる十二指腸から総胆管と膵管の接合部に入る場所にできやすく、とてもレアなケースです。

カルチノイドの治療方法

基本的には癌と同じ考えで治療を行います。カルチノイドのほとんどは、良性の腫瘍です。腫瘍の進行もゆっくりなので、手術で腫瘍をとれば治ります。
他の臓器に転移している場合は、手術や薬物療法で腫瘍を小さくして、症状を抑えることもあります。

まとめ

皆さん、ここまでのお話でカルチノイドと癌の違いがおわかりいただけましたか?
今回のお話は内容が盛り沢山だったので、要点をまとめてみましょう。

癌との違い

1,とてもまれな病気です。
2,進行が癌に比べゆっくりです。
3,ホルモンを分泌する細胞が関係しているため、症状はホルモンの過剰分泌によって起こります。

癌と似ているところ

1,腫瘍です。
2,発見が遅れて大きくなった場合は転移の可能性があります。
3,転移や進行の度合いによっては癌に準じた治療が必要になります。
4,症状がないケースが多いため、検診(内視鏡など)で発見されることが珍しくありません。

最後に・・・

内視鏡で発見されるケースが多いのもこの病気の特徴です。そのため何よりも大切なのは定期的な検診を受けることだと、皆さんも感じたのではないでしょうか。
萎縮性胃炎の方や、大腸ポリープができやすい方に定期検査をおすすめするのもこのような背景があるからなのです。
当院では胃内視鏡、大腸内視鏡ともに年間7000件以上の実績があります。皆さんの健康と健やかな毎日の為に当院がお役に立てればと考えています。電話・インターネットからもご予約できますのでお気軽にご相談ください。