大腸内視鏡ブログ

2009年7月16日 木曜日

検診の便潜血検査は精度が低く、結局は大腸内視鏡検査が必要

会社の検診などで使用される「便の検査」をしたことがありますか?

行政による検診の項目として14年目を迎えた「便潜血検査」は大腸の病気(主に大腸癌)がわかる検査と説明されています。この「便潜血」による大腸癌検診は一般的には「有効性があり効果が大きい」とされております。

ところがです!
この「便潜血検査」には驚くべき実態が2つあります。


驚くべき実態①;感度が低い

便潜血検査は、2日法といって2つの検体を提出することが多いのですが、2つ提出したとしても、その感度が低いことに問題があるのです。

感度が「早期大腸癌では約50%、進行大腸癌では約80%」とされている意味は、
・早期大腸癌があっても50%は便の検査で見つからない(癌があっても便潜血検査陰性となる)
・進行大腸癌があっても20%は便の検査で見つからない(癌があっても便潜血検査陰性となる)

という意味です。

行政側から費用対効果の観点で見る、あるいは人を集団として見た場合は、この感度は満足いく数字かもしれません。
しかし、「まあ大体(6-7割)みつかるのなら(3-4割は自分の癌を見逃されても)いいよ」と思えるような個人はいるのでしょうか?


「便潜血」が不完全である現実では、大腸癌を見逃さないためには大腸内視鏡検査を受けることが必要です。
ところが、現時点では市や会社がコストを負担する「検診」で高価な大腸内視鏡検査を受けることは困難です。
健康を守るためには、自分の意思で(自分のコストで)大腸内視鏡検査を受けるためにクリニックや病院を受診するしかありません。



驚くべき実態②;精密検査の受診率が低い

「便潜血検査」で「要精密検査」と判定された人のなかで、精密検査を受けずに放置している人が40-50%いるのです。
・・・信じられないことですが、「大腸癌の可能性がある」と言われて放置する人がいるということです!

便潜血陽性と言われた場合、5-10%程度で大腸癌がありますから、放置して良いはずがありません。


でも、気持ちは少しわかりますね・・・精密検査とは大腸内視鏡検査(大腸カメラ)のことです。
放置してしまう人は単にものぐさなのかもしれませんが、「大腸内視鏡検査は辛い」という印象がまだあるのかもしれません。
(ちなみに、検診の胃バリウム検査で「要精密検査」と判定された人のうち、放置する人は20-30%です・・・これも多いですね。)

大腸内視鏡検査が避けられる理由は2つあります。
下剤を飲んで腸を空っぽにせねばならないことと検査の最中に腸が動かされるような不快感があることです。

現在は、前者については飲みやすい下剤を用いることや、服用方法を工夫するなどで、負担はかなり軽減されています。
後者については熟達した医師に施行してもらうことで解決できます。




・・・・いかがでしょうか。

・検診(便潜血)さえ受けない人がいる
・検診(便潜血)では大腸癌を見逃すことが多い
・検診(便潜血)でひっかかっても精密検査(大腸内視鏡)を受けない人がいる
・精密検査(大腸内視鏡)を受けても、場合により辛い検査になってしまい(医師の技量によります!)、もう二度と検査したくなくなることがある(一部の先進的施設では絶対にこうはなりませんが)

などの理由で、大腸癌の早期発見、予防は全国的にまだまだ不十分なのです。

2015年までにおける罹患率予測では、大腸癌は癌のなかで第一位になるとされています。
「がんの統計」参照


癌であっても無症状、癌であっても検診でひっかからない、という現状を、もっと私達医師が啓蒙せねばならないことを痛感します。                                   

投稿者 医療法人社団LYCららぽーと横浜クリニック | 記事URL