大腸内視鏡.jP
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下腹部にぽこっと膨らみがあったら脱腸(鼠径ヘルニア)かも

2017/03/01

こんにちは。ららぽーと横浜クリニックです。
さて、皆さんは「脱腸」「鼠径ヘルニア」という病気を聞いたことはありますか? 名前からすると、「腸が飛び出したりはみ出てしまうことかな?」とイメージすると思います。
あまり多くはない病気ですが、それでも日本では年間約14〜15万人以上、アメリカではなんと年間約80万人が悩まされている病気なんですよ。
今回はその「脱腸(=鼠径ヘルニア)」についてお話をしていきます。

【脱腸はどんな病気?】


脱腸とは、正しくは鼠径(そけい)ヘルニアという病気のことです。
ヘルニアとは体の組織が正しい位置から外れてはみだしてしまうことを言います。他にも「食道裂孔ヘルニア」「椎間板ヘルニア」などは聞いたことがある方もいるかもしれませんね。
鼠径部とは太ももの付け根の部分のことです。つまり、脱腸とは腸の一部が鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てきてしまう病気のことです。
脱腸は乳幼児から高齢者まで幅広く起こりえます。鼠径ヘルニアで飛び出しているふくらみの大きさは人それぞれですが、大きいとピンポン玉や卵くらいにまでになることもあるそうです。脱腸かどうか調べるには3つの段階の検査方法があり、基本的には「問診」、「触診」、「CT」という流れで判断していきます。
では、脱腸になるとどんな症状が出てくるのでしょうか?

【脱腸はどんな症状?】

初期症状としては、足の付け根にふくらみができるだけで痛みはありません。次第に突っ張る感じ、不快感、違和感、引っ張られるような感覚が出現することもあります。
ところで、この脱腸(鼠径ヘルニア)には、嵌頓(かんとん)と呼ばれる悪い状態があります。
通常であれば横になったり軽く押したりすると、飛び出している腸は元の腹腔内に戻るのですが、嵌頓(かんとん)とは膨らみを手で押しても腹腔内に戻らなくなってしまった状態のことです。膨隆部位に強い痛みや吐き気を感じ、そのまま放っておくと、飛び出た部分の腸の血流が悪くなり腐ってしまい、命に関わる場合さえあるのです。
酷くなると怖い脱腸ですが、位置により呼び方が違います。

【脱腸の位置により病名が変わる?】

脱腸は大きく3種類に分かれます。

・外鼠径ヘルニア
幼児と成人が発症するのが、外鼠径ヘルニアです。腹壁の外側に出てきます。

・内鼠径ヘルニア(脱腸)
中年以降の男性に多いのが、内鼠径ヘルニアです。鼠径部後方の服壁を腸が突き破った状態のことを言います。

・大腿ヘルニア(脱腸)
女性に多いのが、大腿(だいたい)ヘルニアです。特に出産後の女性に多いのが特徴。
鼠径部の下、足への血管の脇へはみ出すヘルニアです。最も嵌頓を起こしやすいヘルニアなので早急に治療が必要です。

上記の2つ以上のヘルニアが合併するケースもまれにあります。
では、脱腸になってしまう原因とは何でしょうか?

【脱腸の原因】

1、 先天性…小児が脱腸を起こす場合はほとんどが先天性のものです。
2、 加齢…年齢と共に筋力の低下が進み、腸の周りの筋肉が内臓を支えきれないことによって起こるもので、高齢者の多くがこのケースです。
3、 仕事・運動…お腹に力を入れることで起こりやすくなり、瞬発的に力を使う仕事をしている方に多いです。
4、 妊娠・出産…妊娠によるお腹の圧迫などが原因となるようです。出産中や出産後の女性に多く見られます。

特に職業が力仕事、立ち仕事など腹圧のかかるようなお仕事をされてる方や、日常生活では、便秘気味でトイレでいきむことが多い方、排尿時にいきむ方、咳やくしゃみをよくする方、肥満、妊娠中、運動不足の方も要注意です。

【脱腸の治療方法】

脱腸の根本的な治療法は「手術」になります。近年、人工補強材の進歩により、日帰り手術も可能となっています。手術方法は主に2種類です。
飛び出してくる部分を切って、周りの筋肉やスジで飛び出てこないようふたをする方法の「バッシーニ法」。飛び出てくる部分に人工の膜(メッシュ状のプラグ)を張り合わせ人工補強材で穴をふさぐ「メッシュ・プラグ法」、「リヒテンシュタイン法」、「クーゲル法」、「ダイレクトクーゲル法」(術式は脱腸の場所や程度によって使い分けます)。

【まとめ】

いかがでしたか。脱腸は重症化しなければ痛みがなく膨らみがあるだけのため、放っておいてしまう方も多いと思いますが、いつ嵌頓状態になるかわからない病気です。現在、脱腸の治療法としては薬での治療はなく手術のみで、技術の進歩により日帰り手術での治療も可能な病院もあります。当院でも診断は可能ですので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。