大腸内視鏡ブログ

2012年6月22日 金曜日

潰瘍性大腸炎の累積癌化率

潰瘍性大腸炎の患者さんは、この潰瘍性大腸炎という病気とどのように付き合っていらっしゃるでしょうか?
寛解期に入ったからといって、油断は禁物です。自己判断で通院をやめてしまってはいないですか?
しっかりとお薬を服用し治療を続けていく事が大切です。
(参照)潰瘍性大腸炎とは

今回のお話しは潰瘍性大腸炎の累積癌化率のお話しとなります。・・・・そうです。潰瘍性大腸炎は発がんしやすいことが知られているのです。累積癌化率などと聞くと、ただでさえ難病である潰瘍性大腸炎に罹っている患者さんは不安な気持ちを抱かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のブログでお伝えしたいことは内服薬での治療の大切さと、定期的な検査がいかに重要かということです。

まず、潰瘍性大腸炎の基本事項から。
≪潰瘍性大腸炎は今も増え続けている≫
潰瘍性大腸炎は、わが国の罹患率や有病率は欧米に比べて低率ではありますが、1970年以降急激に増加しています。発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性で25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性差はみられません。患者数の推移を特定疾患医療受給者証交付件数からみると、平成21年度には113,306人が登録されており、毎年増加の一途を辿っています。米国の100万人と言われている患者数に比べると、まだ10分の1程度ですが、他人事ではない病気ですね。


さて本題、「潰瘍性大腸炎の累積癌化率」でしたね。

≪潰瘍性大腸炎から大腸癌が発生しやすい≫

この潰瘍性大腸炎を母地とした大腸癌(colitic cancer)の発生率は罹患年月とともに増加します。
潰瘍性大腸炎の患者さんの追跡調査の結果から、累積癌化率は10年で0~5%、20年で8~23%、30年で30~40%と推定されています。ららぽーと横浜クリニックには100人以上の潰瘍性大腸炎の患者さんが通院していますが、実際の発がん率はそれらの数字よりやや低い印象ですが、健常者とは比較にならないほど癌化していると思われます。実際、当院には、他院で内視鏡検査が痛かったため、しばらく定期的な大腸内視鏡検査を避けていたという患者さんが多く来院されるのですが、その中には既に癌が発生してる患者さんも何人もいらっしゃいました。

≪潰瘍性大腸炎の罹患範囲が広ければ発がん率も高い≫

欧米の報告では癌合併率は罹患してから10年間で、全大腸炎型で6.3%、左側大腸炎型で1.0%、直腸炎型ではリスクはないと報告されています。つまり、罹患範囲が広いと発がん率も高いのです。

以上を考え合わせると、
潰瘍性大腸炎の発症後長期経過(10年以上)した症例、特に全大腸炎型では、慢性炎症を背景とした炎症性発癌の合併のサーベイランス(予防と管理をすること)が重要となります。
潰瘍性大腸炎から発生する大腸がんは通常の大腸癌と比較して分化度の低い癌や浸潤癌(つまり性質の良くない癌)の比率が高く、肉眼的に大腸炎の所見と紛らわしいこともあって早期発見がなかなか難しいのです。


近年、症例対照研究で5-ASA製薬(メサラジン)の継続投与が潰瘍性大腸炎の緩解を維持するとともに、大腸癌発生のリスクを減少させることがわかっています。また、定期的な受診や下部内視鏡検査も大腸癌抑制の要因と報告されていますが、これは内服継続効果と同義の現象だと思われます。
・・・・内服薬での治療継続がいかに大切か、定期的な大腸内視鏡検査がいかに重要かということです。

*5-ASA製薬 (5-アミノサリチル酸薬)とは
5-ASA製薬は潰瘍性大腸炎の治療薬として、世界中で広く使用されています。
5-ASA製薬には従来からのサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)と、その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジン(ペンタサやアサコール)があります。経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑えます。炎症を抑えることで、下痢、下血、腹痛などの症状は著しく減少します。5-ASA製薬は軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、再燃予防にも効果があります。現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、5-ASA製薬のように腸の炎症を抑える有効な薬物治療は存在します。治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールしていくことです。


投稿者 医療法人社団LYCららぽーと横浜クリニック