大腸内視鏡ブログ

2012年3月 8日 木曜日

潰瘍性大腸炎と妊娠についてのQ&A

診察でよく聞かれるこの「妊娠と潰瘍性大腸炎」に関する質問。
医学的な結論が既に出ているにも関わらず、患者さんが自分の判断で薬を中止してしまうケースもあり、問題視されています。そこで、今回は潰瘍性大腸炎と妊娠に関する情報を提供します。


Q1 病気がどのような状態のにときに妊娠するのがよいですか?
A1   寛解期(腸の炎症が治まっている状態)です。


潰瘍性大腸炎の患者さんが妊娠する場合、①病気による赤ちゃんへの影響、②妊娠による病気への影響の2点を考える必要があります。
① 病気による赤ちゃんへの影響
活動期(腸に炎症が続いている状態)の妊娠では、不妊、流産や早産の危険性がやや高くなるとの報告があります。
② 妊娠による病気への影響
寛解期(腸の炎症が治まっている状態)の妊娠では、潰瘍性大腸炎の病状に影響を及ぼすことはないといわれています。一方、活動期での妊娠は、約3分の2で病状が活動期のまま維持、または悪化するとの報告があります。
これらの理由から、寛解期に妊娠するのが望ましく、特に6ヶ月以上十分に寛解を維持した状態での妊娠が安全で勧められます。



Q2 潰瘍性大腸炎は遺伝しますか?
A2 ほとんど遺伝しません。


潰瘍性大腸炎は、必ず子供に遺伝するというような遺伝性の疾患ではありません。
潰瘍性大腸炎とクローン病を含む「炎症性腸疾患」というくくりでみると、炎症性腸疾患患者さんの身内に同病の人がいる各率は1~数%と報告されています。これは、そうでない人と比べれば数倍高いことになりますが、それが遺伝の影響なのか、生活環境による影響なのかは、はっきりしていません。
いずれにしても、潰瘍性大腸炎の患者さんのお子さんが同じ病気になる確率は、糖尿病や高血圧など他の疾患に比べると、低い確率といえます。


Q3 妊娠にあたってどのような準備が必要ですか?
A3 産婦人科と消化器科の先生に潰瘍性大腸炎であることと妊娠についてお伝えしておきましょう。


妊娠すると、産婦人科と消化器科のどちらかの診療科にもかかることになります。
消化器科では、妊娠を希望していることを伝え、なるべく寛解期に妊娠できるよう、病気をコントロールすることが大切です。さらに、病状が悪化する場合に備え、妊娠中も潰瘍性大腸炎の診察は定期的に受ける必要があります。産婦人科では、自分が潰瘍性大腸炎であることをきちんと説明し、母体と胎児の健康状態を注意深く観察してもらいましょう。
また、どちらの診察科にもどこの病院にかかっているかを伝えておきましょう。消化器科と産婦人科の両方の主治医が連絡を取り合える状態にしておくと、何かあったとき、速やかに対応できます。

Q4 妊娠中も 薬をのんだ方がよいですか?
A4 基本的に飲んで下さい。


潰瘍性大腸炎に用いられる薬の多くは胎児に影響が少ないことが知られています。したがって、基本的には妊娠前と同様に服用することが勧められます。母体の健康状態を保つことが、胎児の発育、安全にもつながります。メサラジン、サラゾスルファピリジン、プレドニゾロンは、妊娠中に継続して服用しても影響が少ないことが知られています。サラゾスルファピリジンについては、一緒に1日2mgほどの葉酸を摂取することが望ましいとされています。
アザチオプリンなどの免疫調節薬は、胎児に影響を及ぼす可能性が指摘されていましたが、実際に影響があったとする報告は少なく、医師の間でも見解がわかれています。
治療薬については、安心して服用が継続できるよう、医師の指示を仰いで下さい。


Q5 妊娠中に再燃したら どのような治療をしますか?
A5 一般的な活動期の治療に準じて行います。


再然は妊娠に悪影響が及ぶ可能性があることから、胎児への影響が少ない薬、治療法を選びながら、一般的な活動期の治療に準じて治療法を選択します。軽症にはメサラジンやサラゾスルファピリジン、中等症から重症にはプレドニゾロンを用いるほか、潰瘍などの炎症が肛門に近い場合は坐剤や注腸を使うこともあります。また、血球成分除去療法や生物学的製剤なども、安全に治療が行えたと報告されています。


Q6 出産にあたって注意することはありますか?
A6 ストレスや疲れの軽減に努めましょう。


出産前後は、再燃・悪化することがあります。そのためにも消化器医と産科医が連携できるように準備しておく必要があります。出産後は、睡眠不足や育児ストレスがきっかけとなり再燃してしまうことがあります。できるだけ疲れをためないように睡眠時間を確保し、子育て以外の家事などは周囲の人に協力を仰げる体制を整えておきましょう。
また、再然時に備え、周囲に協力を求められるような環境を整えておくことも大切です。ご主人やご両親など、身近な人には病気のことをきちんと理解してもらいましょう。
いずれにしても、出産後、赤ちゃんを育てるのはお母さん自身ですから、まずは自身の体調管理に気を配り、再燃予防に努めましょう。


Q7 授乳中も薬をのんだ方よいですか?
A7 基本的に服用しましょう。


母乳は、赤ちゃんに必要な栄養が含まれており、母乳で育てることは感染予防や発育面にもよい影響を与えます。お母さんがのんだ薬は、体内に吸収され、ごくわずかに母乳に移行しますが、その薬が赤ちゃんに影響を及ぼすものかどうか種類によって異なります。メサラジンやサラゾスルファピリジンは母乳への移行が少なく、安全な薬と考えられています。
一部、母乳にはふさわしくない薬も有りますが、薬をのまないことで再燃をしてしまうと育児もできなくなってしまいますので、薬は継続して服用し、授乳してもよいかどうかは、医師に相談しましょう。



Q8 潰瘍性大腸炎の男性が注意するべきことはありますか?
A8 治療薬による男性不妊が報告されています。


潰瘍性大腸炎の男性は、潰瘍性大腸炎それ自体が原因で不妊になることはありません。
ところが、一部の治療薬(サラゾスルファピリジン)では、精子の数や運動能を低下させるという報告があり、男性不妊の原因となりえます。しかし、この影響は一部的で、薬の内服を中止すれば、2ヶ月程度で元に戻ります。
赤ちゃんを希望している男性患者さんは、医師に相談し、薬の種類について検討してもらいましょう。




いかがでしょうか・・・
お悩みへの回答はありましたでしょうか。

一般的に、潰瘍性大腸炎は症状がある時(活動期)と症状の無いとき(寛解期)を繰り返す疾患です。寛解期を長く過ごすため、また症状の重い活動期にならないために、自分の体調の異変を感じたら、早めに受診し、症状が軽い状態から適切な治療を受けることが大切です。日頃から自分自身の症状をしっかりと理解し、症状が出たら、早めに主治医の先生に相談しましょう。


投稿者 医療法人社団LYCららぽーと横浜クリニック