大腸内視鏡ブログ

2012年1月24日 火曜日

医師が陥りやすいドツボ②:「現代日本社会の裁判の実態にヤラれる」

医師が通常の診療で、普通に気をつけていても陥りやすいドツボがあります。

ドツボの原因の二つ目は、ついつい社会的事情を鑑みるという観点に欠けてしまうこと
医師が正しい診断に至っていたとしても、同じ臓器に別の病気が潜んでいた場合に裁判では責任を追及されてしまいます。
題して、「現代日本社会の裁判の実態にヤラれる」


例えば、「2日前からの発熱・腹痛・下痢があり、今朝から水様便がややピンク色になってきた」という症状の患者さんが来院したとします。
医師は腹部レントゲンや採血などを行って急性胃腸炎という正しい診断に至ったとします。
実際、急性胃腸炎(冬場によくノロウィルスによって起こる)では、腸の炎症がひどい場合は出血をきたすことがあります。内服治療によって、当然症状はなくなり、めでたし、めでたしでした。
この場合、医師は症状やレントゲンなどで正しい診断を得て、患者さんも胃腸炎は治っており、医療上は何も落ち度はないはずです。


ところが一年後、その患者さんは大腸がんがあることが判明・・・
患者さんは思います。
「あの時、あの医師が大腸内視鏡検査をしてくれていたら早期発見できただろうに(怒)」



普通に考えると、医師は当時胃腸炎という正しい診断をしており、それ以上の大腸内視鏡検査まで行う企図は湧かなくて当然です。しかしながら、患者さんが言うように、胃腸炎になった時に検査していればもっと早期発見できたというのも確かです。
こういったトラブルは医療では頻発します。
医療裁判になったとき、裁判所はどういう判断を下すでしょうか。
①「症状は胃腸炎が原因であったため、医師には大腸内視鏡検査まで患者に勧める論理的な理由はなかった」
②「一般的に出血・下血は大腸癌の症状の一つであり、医師は十分な注意を怠った」
のどちらの転んでも不思議ではありませんが、現実は②≧①でしょうか。
日本の裁判の傾向として、訴えた側にある程度の訴えたメリットを与える裁量判決結果が多いのは事実ですから。(なぜそんな訴訟社会になってしまったのか・・実は理由は案外根深かったりするのですが、ここでは割愛)



上記のようなトラブルを回避するため、胃腸炎による出血があったら、症状が落ち着いた頃に大腸内視鏡検査を行うのが専門的医療です。大腸に胃腸炎以外の病気さえもないことを確定づけるために検査を行うのです。
こういった検査は「スクリーニング検査」と呼ばれており、大腸以外の他の多くの臓器についても行われています。


投稿者 医療法人社団LYCららぽーと横浜クリニック