大腸内視鏡.jP
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アメーバ赤痢って何??

2017/11/01

皆さんこんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
だんだん寒い季節になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか…
突然ですが、皆さんは「アメーバ」をご存知でしょうか、理科の授業で見たことがある方も多いかもしれません。
今回はそんなアメーバという言葉が入る「アメーバ赤痢」という病気についてご紹介したいと思います。

■アメーバ赤痢ってどんな病気?

アメーバ赤痢とは「赤痢アメーバ」という原虫によって引き起こされる大腸の感染症です。ご存知の方は少ないかもしれませんが、世界で年間約5千万人が感染し4-10万人の死亡者がいると推定されている病気です。
「赤痢」と聞くと発展途上国を旅行した人がかかる下痢、とイメージする人が多いかもしれませんが日本国内でも多く発症しており、毎年1000人を超える報告があります。年々感染者は増加傾向にあり、4-5年前と比較すると約2倍以上増加しています。日本国内の感染者の8-9割は海外渡航歴はなく国内で感染しています。
では、アメーバ赤痢にはなどのような経路で感染するのでしょうか。

■アメーバ赤痢の感染経路

赤痢アメーバの嚢子(のうし:シストとも呼ばれ、生物体が堅固な膜をつくり一時的に休眠状態となったもの)に汚染された飲食物を口から摂取することで感染するとされています
しかし、先進国では男性同性愛者と知的障害施設の入所者に感染が多く報告されています。男性同性愛者でアメーバ赤痢に感染している患者の場合、梅毒やHIV、B型肝炎、性器ヘルペスなどの他の性感染症にかかっている可能性が高いことが知られています。
日本国内では食中毒として発生するケースはほとんどなく、性行為による感染がほとんどです。性別で見ると男性同性愛者に感染が多いように男性9割:女性1割とされています。しかし、女性の感染者も年々増えてきており、理由として異性間の性行為でアメーバ赤痢に感染する男女が増えているという点が挙げられます。
次に症状を見ていきましょう。

■アメーバ赤痢の症状

・粘血便
・下痢
・しぶり腹(便が出ないのに便意をもよおす)
・鼓腸(腸管内や腹腔、腹膜腔内にガスがたまって腹部の膨隆した状態)
・排便時の下腹部痛など
上記が代表的な症状ですが、感染しても症状が現れるのは5-10%程度です。潜伏期は2~3週間とされていますが、数カ月から数年におよぶこともあります
典型的なケースではイチゴゼリー状の粘血便を排泄し、数日~数週間の間隔で増悪と寛解を繰り返します
増悪時は腸穿孔(孔(あな)があく)を起こしたり、腹膜炎を起こすこともあります。また、大腸炎症状を起こす患者さんのうち約5%で腸管外への播種(はしゅ:病原体がばらまかれる)がみられます。肝臓・肺・脳などで膿瘍(のうよう)を形成し、重い症状を示します。このうち肝膿瘍が最も高い頻度でみられます。

■アメーバ赤痢の診断

一般的に行われている検査は赤痢アメーバは肉眼で見ることができないため、便や膿瘍液を採取し、専用の塗料で染色させ、顕微鏡で観察することで発見・診断します。
ただし、感染しても症状が発症しない人や症状があっても軽いために医療機関を受診しない人が多いアメーバ赤痢の感染者は、報告されている数をはるかに上回ると考えられています。そのため、自覚症状がなく偶然受けた大腸内視鏡検査でアメーバ赤痢が見つかったケースが多く報告されています
では、実際にアメーバ赤痢と診断をされた時はどのように治療をしていくのでしょうか。

■アメーバ赤痢の治療方法

赤痢アメーバに対する治療薬を使います
一般的には内服薬が有効とされていて、治療ではまず内服薬のメトロニダゾールが選択されます。メトロニダゾールは、ピロリ菌駆除でも使用される、原虫や細菌を駆除する効果がある薬です。
症状がひどい場合や内服薬による治療が困難な場合には、注射薬のメトロニダゾールやデヒドロエメチンによる治療が行われます。
また、肝膿瘍が合併している場合は、体内に溜まった膿を細い管で排出する経皮的膿瘍ドレナージという治療法や腫瘍穿刺、外科的手術が行われる場合もあります。経皮的膿瘍ドレナージは、外科的手術ではないため、体に傷跡がほとんど残らないという特徴があります。
再発防止のため、赤痢アメーバの嚢子(シスト)を駆除するバロモマイシンを服用する場合もあります。治療後2~3か月以上経過しても再び症状が見られず、患者の糞便中に赤痢アメーバが検出されることがなければ完治となります。

■最後に…

いかがでしたか?「アメーバ」という単語やは知っていても、「アメーバ赤痢」という病気をご存知の方は少なかったのではないでしょうか。
年々増加傾向にある感染症で、死亡者も出ている病気です。女性よりも男性に多く見られますが、性行為により感染してしまうため男女共に注意が必要です。
症状は粘血便、下痢、しぶり腹、鼓腸、排便時の下腹部痛などが挙げられます。早期発見であれば内服薬で完治することができますので、上記症状に当てはまる方は早めに病院を受診しましょう
ただし、自覚症状が出ない場合が多く、感染したことに半数以上の方が気が付かないという怖い病気でもあるため、定期的な大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。当院でも大腸内視鏡検査を行っていますので、お気軽にご相談ください。